2021.05.30　民衆の声に負けた総督ピラト

夜が明けると、イエスを公けの場で処刑するための許可を得ようと、処刑の権限をもつローマ総督ピラトの所にイエスを引き出して訴え出た。ピラトは、「お前たちの律法で裁けばよいではないか」と言った。すると彼らは、「わたしたちには死刑にする権限がありません」と答えた。そして、「この男はユダヤ国民を惑わし、ローマ皇帝に税や貢を納めなくてもいい。自分こそ王であるキリストだと言っているのです」と訴えた。ピラトはイエスと官邸に入り、「お前はユダヤ人の王なのか」と言った。イエスは「わたしの国はこの世のものではない。わたしは真理を証するために生まれ、この世に来た。真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」と言われた。ピラトは言った、「真理とは何か」。

二人は再び彼らの前に出た。「この男からは何の罪も見出せなかった」とピラトが言うと、「この男はガリラヤから始めてエルサレムまで、ユダヤ中を扇動しているのです」と彼らは言った。ピラトはガリラヤの領主ヘロデ・アグリッパがエルサレムに来ているので、イエスを彼のところへ送った。だが、また送り返されてきた。ピラトは彼らを呼び集めて言った、「ヘロデもこの男の罪は見出せなかった。どうだ、鞭打ちにして、ゆるしてやろう」。すると彼らは一斉に、「殺せ、死刑だ」と叫んだ。

「過越祭の恒例で、重罪人を一人赦免することになっているが、だれを赦してほしいのか。この男か」。ピラトが皮肉った。すると、「その男じゃない。バラバだ」。「ではこの男はどうするのだ」。「十字架につけよ！十字架だ！」。「死刑になるような事は何もしていない。何をしたと言うのか。鞭打って、ゆるしてやろう」。彼らは大声で詰め寄り、ピラトは折れた。彼は水で手を洗い、「この男の血の責任は、わたしにはない。勝手に始末しろ」と言って官邸に入った。

ここから学ぶことは何か。神がアブラムに、「いまいる所を出て、わたしが示す地に行きなさい。あなたを祝福する」と言われた時、彼は素直に従った（創世記12:1-4）。イエスは神の祝福（聖霊。ガラテヤ3章）を与える者、すなわち「神が示す人」である。その方を処刑するとは、思い違いも甚だしい。ピラトはイエス反対の声に押され、罪のない者を彼らに引き渡してしまった。血の責任は免れない。サウル王も民衆の声に負けた（サムエル上15:24）。サムソンは恋人デリラの情に負けた（士師記16:16-17）。民衆の声、利得、親しい人への義理や情。これらが、わたしたちの心を神の道から引き離す。