2019.01.01　ナオミとルツ

現天皇が去る12月、85歳の誕生日を迎えられた。記者会見で一年を振り返り、集中豪雨や台風による被害が例年より多かったと述べられた。平成時代を振り返っても、震度7クラスの大地震が四度もあった。中でも阪神大震災（平成7年）、東北地方太平洋沖地震（平成23年）は大きな被害をもたらした。巨大地震はいつどこで起こるかわからない。そこに怖さがある。

聖書の舞台であるイスラエルの場合は飢饉による災害の怖さがあった。士師記の時代にも雨が降らず、土地が乾燥して作物・樹木・草類が枯れ、人も家畜も大きな被害を受けた。ベツレヘムの農民エリメレクは土地を売り、家族四人で東の国モアブに移住した。飢饉の時に土地を売っても買い手がつかず、不動産屋に二束三文で買い叩かれるので、大した金にはならなかったが、それで生活を凌ぐほかなかった。どういう暮らしをしたのか聖書は何も告げていない。モアブでの10年の間に、エリメレクが死んだ事、二人の息子がモアブの女性と結婚した事、ところがその息子らが相次いで死んでしまい、ナオミと二人の嫁だけが残ったことだけを告げている。いまと違い、昔はどこも女性だけでは生活力がないため、男性に頼らないと生きていけなかった。土地を売ったお金もほぼ底をついていたので、お先真っ暗であった。

ナオミの心は不安と心配で一杯だった。ちょうどそういう時、風の便りに、イスラエルでは神が顧みられ、麦や作物、草木類も順調に育っていると聞いた。ナオミは心を神に向けた。この先は神に頼って生きていこうと、まじで決心した。生活や生きる基盤を失って、はじめてその気になったといえる。それまで神は、心の中の「置物」だった。頼る存在ではなかった。真剣に神に頼る決意を固めた時、すなわち彼女の心の転機を境に、神が働かれた。彼女は二人の嫁を実家に帰し、再婚するように勧めた。一人の嫁は帰った。だが、ルツは断固拒み、生涯義母と苦楽を共にすると言った。神がルツの心にその思いを与えられたからである。二人はベツレヘムに帰った。ルツは麦刈りの間、落穂拾いを続けた。外国女の新参者ゆえ、差別や嫌がらせがあったが、ルツは働いた。広大な畑の持ち主ボアズがルツの噂を聞いた。義母に尽くす感心な女性と知り、彼女と結ばれていく。ナオミにとってルツは神の恵み・祝福だった。失った以上のものを彼女から得た。