2021.04.18　悲しみと悩みの中で祈るイエス

イエスと11人の弟子は最後の晩餐（夕食）を終えた後、イエスが弟子たちに、「仕える」人こそ「偉い」人だと教え、試練を忍んだ者は神から報われると語られた後、ヨハネ17章の祈りをされた。そして賛美を歌った後、一同でオリブ山へ向かった。その途中、イエスがペテロに、「サタンがあなたがたを振るいにかけることを願って許可された。あなたの信仰がなくならないよう、わたしはあなたのために祈った」と言われた（ルカ）。するとペテロが、「わたしは獄でも死でも、あなたと一緒に行きます」と答えた。そこでイエスは、「あなたは今夜、鶏が鳴く前に三度、わたしを知らないと言うであろう」と言われた。ふだんの自分からは、卑劣さや醜悪さは出てこない。しかし、自分に何か不都合な事や不利な事が起きると、自分を守ろうとする思いが出て来て、嘘をついたり、他のせいにしたりする。ペテロがこの後、「わたしはあの人（イエス）を知らない」と三度言ったのもそれである。嘘や卑劣さは、ふだんは隠れているが、舞台があれば役者のように出て来るのです。

オリブ山の裾にあるゲッセマネの園で8人を残し、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをつれて、離れたところへ行き、「誘惑に陥らないよう、目を覚まして祈っていなさい」と言い、離れた所で祈られた。この時の祈りは、「悲しみと悩みの中での祈り」だった。何を悲しみ、悩まれたのか。推測だが、「わたしは罪人らの手に渡される」（マルコ）と言われた。彼らを手引きしたのはだれあろう。弟子のユダだった。選び、育て、期待した弟子に背かれ、苦しめられる。わが子に背かれ、苦しめられる親の悲しみほど悲しく、悩ましいものはない。イエスはその事を思って悲しまれたが、それだけではなかった。父（神）の事に思いを向けられた。神は人間を愛し、人間のために太陽も地球も創造された。そして「神のかたち」である霊魂をお与えになり、地球の生物を人間の手に委ねられた。ところが、人間はやがて神に背き、罪に罪を重ねていった。心の中から神を追い出し、自らを神とした。イエスの悲しみはこの一事に尽きる。神が深く愛した人間がこのような罪のために、神の怒りを招き、永遠の重い審判を受けるようになる。この事を思うと、イエスの心は悩みで張り裂けそうになった。「父よ、彼らをお赦しください。自分がわかっていないのです」と、人間の救いを切に求めて祈られた。汗が血のしたたりのように流れ落ちたとルカは記している。神への罪と神の怒りを赦していただくためには、神のひとり子である自分が犠牲になる以外に方法はない。イエスは十字架刑を思われた。