2020.01.01　イスラエルの苦難とモーセの登場

モーセが生まれる前のイスラエルの時代背景

アブラハムの孫ヤコブに12人の息子があった。ヤコブは11番目のヨセフをとくに気に入っていた。ヨセフが17歳のある日、神からの夢を二度見た。意味のある夢だった。彼は兄たちにその事を話した。兄たちは、ヨセフが将来兄たちを支配するようになるとの内容だったので腹を立て、ヨセフをエジプトに売り飛ばした。父ヤコブには、ライオンに噛み殺されたと報告した。ヨセフはエジプトの高官に買われ、家僕奴隷として仕えたが、高官の夫人に身に覚えのない罪の濡れ衣を着せられ、13年間も地下牢に閉じ込められた。しかしエジプトの王が見た夢の意味をヨセフが神の霊により見事解き明かしたので、王に気に入られ、総理大臣に抜擢された。ヨセフの父ヤコブと兄たちの家族70余人がヨセフを頼ってエジプトに移住してきた。彼らはエジプトで増え、大家族からイスラエル民族へと変貌していった。エジプトの歴史に照らし合わせると、第15-17王朝のヒクソス（外国人）王朝にあたると思われる。ヒクソスもイスラエルも牧羊の民だったが、エジプト人の地方領主の息子たちが結集してヒクソスを追放し、第18王朝を樹立した。出エジプト1:8の「新しい王」とは、この王朝の事ではないかと思われる。この王朝は在留外国人（イスラエル民）に厳しい政策を敢行した。各種の重労働を強い、彼らの人口増加を抑制した。男児が生まれたら、その場で殺すようにと助産婦たちに命じた。

モーセの誕生と奇跡

イスラエルは神に助けを求めて、真剣に祈り続けた。出産の現場で働くイスラエルの助産婦たちも切に祈った。この状況の中で、一人の男児が生まれた。助産婦は何かを感じ取った。この子は殺すべきではない。神がお与えになった子かもと思った。それで、そっと隠れて母親に渡した。命がけだった。神はこういう人を用意しておられた。「主の山に備えあり」（創世記22:14）。母親は家で子を三カ月育てた。だが、それ以上隠し続けることは困難だった。この子をどうしたらよいのか。両親は思い悩んだ。助産婦の言葉が心をよぎる。この子がイスラエルの救いに用いられる？ もし神の思し召しであるなら、神はきっとそのようにされるだろう。この子を神に委ねよう。母親は籠をナイル川の岸辺に浮かべた。ゆるやかに流れていく。心の中で祈った。籠は水浴びに来ていたエジプトの王女たちの目に止まった。イスラエルの赤子だった。何と王女は捨てなさいと言わないで、わたしが育てますと言った。ありえない奇跡が起こった。