2018.11.11　不安や悩みに打ち勝つ秘訣

ガリラヤ湖に面した北側の町カぺナウムに住む役人の息子が、ある時、高熱にかかり死にそうになった。父親は急いでイエス・キリストのもとに駆けつけた。このところカぺナウムにおられたイエスだが、あいにくこの時は二十七、八キロほど離れたカナの町へ行っておられて不在だった。「ああ、こんな時に！」と役人は自分の不運を嘆いた。しかし嘆くだけでは解決にならないので、彼はその足でカナへ向かった。ここが幸と不幸の分かれ道である。イエスをどこまでも求めていくか、それともここで諦めるか。どこまでも求める人は少なく、諦める人の方が圧倒的に多い（マタイ7:13-14）。

役人は途中山坂のある二十数キロの道を急いだ。いまにも消え入りそうな息子の命の灯が持ちこたえますようにと心で願い、案じながら、イエスをめざして進んだ。やっとの事でカナに辿り着いた時には、身も心もくたくたになっていた。「ナザレのイエスさまはどこにおられますか」。イエスのおられる場所を聞いて、イエスの前に出た。心臓は高鳴り、呼吸も荒い。「主よ、いまカぺナウムから来ました。息子が死にかかっています。助けてください」。イエスは役人を見て言われた、「あなたがたは、しるしと奇跡を見なければ決して信じない人たちである」。きわめて冷徹な言葉だった。そう言えば、イエスはツロ・フェニキアの母親が娘の癒しを求めた時にも冷徹な言葉を投げ与えた。優しさと冷徹さの両面をもち、状況と相手に応じて使い分ける。役人は息子の事で感情が高ぶっており、自分が求める言葉以外のことは何も入らなかった。「主よ、どうか息子が死なないうちにきてください！」。すると今度は、「お帰りなさい。あなたの息子は助かる」と言われた。役人が求めていたのは、その言葉だった。ストンと彼の心に入った。イエスの口から出た言葉がストンと心と霊に入るなら、その人の霊魂・身体・環境に神の力が働き、「死から命へと移る」（ヨハネ5:24）。

主が「息子は助かる」と言われたその時、息子の熱は引いた。だが父親にはそれが見えない。ヨルダン川の水量と流れが速すぎて、イスラエルが川を渡ることができなかった時、祭司が契約の箱を担いで川に入った。その時、水が上流で「せき止められた」。だが下流にいたイスラエルの前は、まだ水が勢いよく流れていた。時差の問題である。