2023.05.14　母と子

80年代後半から芸能界で人気者の西村知美さんが34歳の時、『天然出産』を出版し、待望の赤ちゃんが生まれたことを書いた。散々苦労の挙句生まれた子だから、喜びが大きい。「生まれてくれて本当にありがとう」と何度もお礼を言っている。300名礼拝を願って祈りつづけているわたしたちも、最後まで諦めない西村さんの心の強さに励まされる。子を得ることは母の大きな喜びであるが、その一方で、子ゆえの悩み、悲しみ、苦しみを味わうのも母である。やはりタレントで、ハワイ生まれの日系二世キャシー中島さんは、2010年に『6％の明日』を出版した。前の年、長女で29歳の七奈美さんが肺ガンで亡くなり、深い、大きな悲しみを味わったため、記録しておきたいと思ったのだ。キャシーさんは母親としてあらゆる努力をした。結婚して9か月しか経っていない娘が「なぜ、どうして」と、心の中で何度も何度も苦しみ、叫んだ。

聖書の中にも母親が何人も出てくる。比較的平凡な人が多いが、旧約聖書と新約聖書の最初に出てくる母親は、優秀な息子を残忍な方法で殺されるという、もっとも悲しい経験をしている。マリヤの場合、イエスの死に大義があるので慰められるが、エバの場合はアベルの死に何の意義もない。いまロシアによってウクライナの子どもが連れ去られ、あるいは爆撃で殺されているが、これも不条理で何の意義もない。アダムとエバは神に慰めを求めて祈った。神だけが慰めを与えうる方だから。子を失い、奪われた人はアダム夫妻を見倣ってほしい。「過ぎ去ったことを思い出してはならない。いにしえの事（過去）を考えてはならない。見よ、わたしは新しい事をなす。やがてそれは起こる」と神が言われる（イザヤ43:18-19）。神は後に夫妻にセツを与えられた。セツからノア、アブラハム、ダビデ、イエスなど神に用いられる子孫が生まれ出て、悲しみに優る大きな祝福が、いくつも輝かしく並ぶ。悲しい過去ばかり見ないで、神が与えてくださる大きな慰めを信仰の目で見つめていこう。神はいつも信仰に応えてくださる。

もうひとりの母、ナオミを見よう。彼女は飢饉で土地と家を二束三文で売り、家族と隣国モアブに移住した。10年後、夫と二人の息子を病気で亡くし、息子の嫁二人と自分だけが残った。頼りになる者たちを失って、はじめて真剣に神に頼るようになった。すると神は嫁ルツの心に働かれた。ルツはナオミを離れず、ナオミの故郷でよく働いた。それが地主ボアズの目に留まり、ルツを妻に迎える。この夫婦から後にダビデが生まれる。すべてを失っても、神に頼るなら、神は大きな祝福を用意してくださる。